干からびたトカゲのしっぽ

日々遺されて乾いていく

巨大な組織がぼくを働かせまいとしている

リコリス・リコイルが終わってしまった…

 

今更11~13話をまとめて観たのだが、もう最高に”面白くて可愛い”アニメだった。

このB級アクションバディ・ムービーに美少女の皮をかぶせたようなアニメは、それ以上の小難しい考察や評論をするのがバカバカしくなるような勢いを視聴者に感じさせてくれる。

  • 「孤児を育てて治安維持の為の殺人エージェント(リコリス)にする体制側の組織」
  • 「情報統制が敷かれていて、リコリスたちは人知れず消耗され、その上で安寧を無自覚に享受する市民たち」
  • ジョン・ウィックで有名なC・A・Rシステムを前面に押し出した骨太のガンアクション」
  • 「手段を選ばない無鉄砲さで本部を追放されたエリート(?)と半ば隠居しているベテランのバディ(2人とも当然美少女)」

リー○ル・ウェポン、セ○ン?

そんなボンクラオタクの好きそうなものを過積載してスタートしたリコリス・リコイル、このマシマシっぷりにどのように進んでいくのか楽しみにしていたが、思いのほか

社会の描き方が雑だった。

明らかに打倒されるべきディストピアじみた社会に少女たちが反抗していく物語なのかと思いきや、美少女同士の心の交流を描くには社会などという大きな視点はノイズでしかないのだろう、社会の描き方は突っ込みどころだらけである。

個人的に一番笑ったのは

いや、そうはならんやろ

ヘイローの浮かんでない女の子は撃っちゃダメだろ(頭キヴォトス)

 

そんなわけで千束とたきなの関係から離れるといろいろガバガバになる本作だが、別に作品がつまらないとかそんなことは感じない。

 

むしろガバガバな社会と反比例して、千束とたきなが親密になっていく描写が繊細かつ濃密に描かれていく為、見るべきポイントがはっきりして心地よいのだ。

 

さかなあぁ~(北斗のげんこつ)を皮切りに戻ることしか興味のなかったたきなが千束という胸のでかくて距離感の近い銃弾を避ける美少女にハマっていく。

スカートをめくりめくられ、胸を触り、デートして下着を買いに行き、いろいろあって余命幾ばくも無いことを知らされ、そんな千束の為にあれだけ戻りたがっていた本部に戻ることすら投げ出す狂犬たきな。

 

もうこれはしょうがない、ぼくも視聴者としてこの上質な百合を最後まで楽しませてもらった。

 

千束に狂わされたホモのおっさん達の気持ち分かるよ、あんないい子を近くで見続けたらそりゃぁ崇拝したくもなるし、そんな子に殺されて一生忘れられない傷になりたいもの。

 

とにかく見せたいものがはっきりしていてそれが上質であれば社会の描き方など適当で良い、よいハズなのに、同じく社会の描き方がガバガバなのにはっきり「クソだな」と思ったアニメを最近見たような…

 

そうだ、竜とそばかすの姫だ

 

ポストジブリとしての地位を築きつつある細田守監督の劇場アニメである。

このアニメ、とにかく音楽と映像美がハイレベルで、冒頭の仮想空間”U”の紹介から主人公のライブシーンまでだけでも劇場に足を運ぶ価値はあるのではないかと思う(まぁ自分は金ローで話題になったから見たクチなんだが)

millennium paradeの主題歌が最高でprime musicで聞きまくっていたのだが、劇中で使用されていた曲であることを今回初めて知った。

この音楽と映像が素晴らしいだけに、本当に脚本のどうしようもなさが際立ってしょうがない。

 

まず第一に主人公のベルが何を考えてるのが終始よくわからない、なぜ仮想世界で迷惑プレイヤーでしかない竜のリアルを気にしなければならないのか、なぜラストに単身で虐待されている兄弟を助けに向かうのか、本当に共感できる部分がストーリーの都合上なのだろうが全くわからない。

さらに母親の自己犠牲と対比になるように終盤の展開が用意されているのは良く分かるが、いまどきネットで素顔を晒す行為を、激流に入って子供を助ける行為と並べるのはどうなのか?

細田守監督自身が優秀な演出家だからこそ、セリフの外の意図は伝わるが、脚本の突っ込みどころのせいで全く頭に入ってこない。

散々ネット上でも非難されているラストの児童相談所の48時間ルールもそうだが、どうにもサマーウォーズの頃から、公権力自体を否定するかのような描写が気になって仕方がない。

適当な野犬(おおかみこどもの父親)の回収にせよ、適当にワッパを掛ける警官にせよ、現実の日本を舞台にしているならもう少し表現のしようがあるのではないか。

ぼくの親父は元公務員だし、友人達にも公務員として働いている者がいて、彼らの苦労を知る人間としては細田守監督の描写は容認できるものでは無い。

 

ハイレベルな作画とぼくらをとりまく社会の描写がガッバガバなのは変わらない二作だが、リアリティラインの下げ方の思いきりと、何よりキャラクターの魅力でここまで評価が変わるものなのかと記事を書いていて思った。

 

そしてぼくも公権力の行使をするべく適当な自治体に履歴書等を送ってみたが返信が来ない。

適当に書いた志望動機と職務経歴書がまずかったのか、証明写真をワイシャツっぽい私服で撮らざるを得なかったからなのか、それとも政府と結託している裏の組織に情報統制が敷かれているから合否通知が届かないのか、すべては闇の中である。