干からびたトカゲのしっぽ

日々遺されて乾いていく

全裸の男が燃えてるマンガ

緊急事態宣言が出されて数日たった。

 

ぼくの生活は何も変わっていない、健康な犬猫に予防医療を勧めることばかりを続けている。

 

自分に本当に社会との接点があるのかわからなくなってきた。

 

ペットのワクチン接種なんぞ不急不要な外出ではないかと思うが、飼い主にとってはそうではないらしい。

 

そんな事はどうでもよくて、今更発売されていた事に気づいたチェーンソーマンの6巻を読んでいた。

 

チェンソーマン 6 (ジャンプコミックス)

チェンソーマン 6 (ジャンプコミックス)

 

 

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呆けた顔で妙に哲学的なことを言う主人公のデンジ

 

この漫画はたまに哲学的なテーマや映画的な構成、画面演出が登場していたが、大学生のぼくの人生観に多大な悪影響を与えたあのエロゲのタイトルが見える以上反応せざる負えないのがどうしようもない。

 

”1話しか読んだことないがこの作者の前作であるファイアパンチってどんなマンガなんだ…?”

 

いてもたってもいられなくなったので全巻買って読んだ。

 

傑作だった…それも人に勧めにくいタイプの…

 

 

1話はネットで話題になったときに読んだ記憶がある。

 

氷と飢えに包まれたハードな世界観、近臣相姦、カニバリズム、苦痛に包まれた主人公、妹を殺した男への復讐心など心躍る要素だらけの1話だったのは記憶に残っているがそのまま放置していた。

 

そのあとに続くのは主人公アグニが世界の理不尽と戦う復讐譚ではなかった。

 

”生きる意味”や”演じること”をテーマに展開されるやたら思い読後感を残す何かだった。

 

もう1巻の終わりで復讐相手は罪悪感に苛まれ、精神に異常をきたしたおっさんに変わり果ててしまっている。どうなるんだこの漫画。

 

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もうコレどうすんだよ、エルメスの兄貴でも戸惑うレベル。

こんな相手殺してもすっきりしねぇよ。

 

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そして2巻に入って登場する映画マニアの狂人トガタ

 

主人公アグニを主人公に面白い映画を撮るメタ視点を持つキャラの登場で物語は入れ子構造をした予測不能な方向へ向かっていく。

 

その後4巻、6巻と世界の真相が明らかになったり、いないはずの氷の魔女が登場したり、読者置いてきぼりで復讐を遂げたりする急展開の一方で、この漫画の語るテーマがさらにはっきりとしてくる。

 

復讐者、救世主、兄、家族、どれもこれも主人公アグニはわかっていながら”演じて”いるのだ。

 

展開のネタバレは伏せるが、ネタバレくらいで評価の変わるようなものではないと個人的には思う。

 

とにかくこの物語は生きる理由まで他人に依存していた一人の男が、演技じゃなくても”生きたい”と願えるようになるまでを描いた救済の物語なんだろう。

 

そして偽物だとわかりきっている物語でも心動かされる我々にフィクションとの向き合い方を考えるいい機会だった。

 

カタルシスも糞もない虚無感に近い読後感を覚える作品は大好きだ。

 

生きる意味など形而上学的な命題を考えずにいられない学生におすすめ。

 

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大笑いしたページ 全員が(生首含む)どうしようもない現実を、何かを演じることで乗り切ろうとしているのが2回目に読むと分かって何とも言えない気分になるのも良い

 

ぼくは動物好き(特にネコと柴犬)を演じるのにもう疲れてきたよ、営業の人ってすごい